準安定な2次元層状物質を利用した半導体デバイス
東北大学 グリーン未来創造機構
グリーンクロステック研究センター
大学院 工学研究科
知能デバイス材料学専攻
物質機能創製学講座
機能電子材料創製研究分野
齊藤研究室
2次元層状構造を持つ物質はこれまで多数報告されていますが、それらは熱力学的に安定な物質が大部分です。最近、アモルファスという原子配置がバラバラの物質を加熱して原子位置を整えていく過程で、準安定的な層状物質を得ることを発見しました。これはGeTe2という組成で、この物質は天然には存在しませんし、普通の作り方では作ることができません。このような特殊な作り方で作製したGeTe2は、半導体の性質を示すことがわかりました。本手法は、従来全く知られていなかった層状物質を開拓する新しい手法として期待されています。
トランジスタに代表される電子デバイスでは、最もキーとなる半導体はもちろんですが、その周囲には金属の電極や、電気を通さない絶縁体といった様々な物質が接触してあり、それぞれの界面が重要な役割を担うことが多いです。2次元層状物質を用いたトランジスタでは、半導体である2次元物質を流れる電流(電子)が、金属の電極に効率よく入っていかないという問題がありました。これは金属と2次元物質の間にある接触抵抗というものが存在するからです。そこで従来の金属ではなく、電極にも層状物質を用いた異種層状物質界面を作製しました。その結果、従来金属に比べて接触抵抗と著しく低減し、駆動電流を4〜30倍にすることができました。異なる層状物質同士の界面は、欠陥等が少ないことが期待され今後の電子デバイスの性能向上に大きく貢献すると期待されています。
2次元層状物質はその優れた特性から将来の電子デバイスに用いられることが期待されています。一方で、特性だけが良くても、研究室レベルで作れるだけでは不十分で、安定的に実際のデバイス製造プロセスに適合した方法で作製される必要があります。これまでSb2Te3やBi2Te3といったTe系の層状薄膜やMoTe2といった遷移金属ダイカルコゲナイドのスパッタ法による作製に成功してきました。スパッタ法は量産にも用いられる手法であり、大面積に高品質な層状物質薄膜を成膜する技術の開発を実施してきました。
電圧を印加した際に電流が非線形的に流れ、電圧を下げると再び元の状態に戻る素子は、セル選択素子として不揮発性メモリという情報を記録するデバイスに用いられます。このセル選択素子=セレクタには、SやSe、Teといった第16族元素(カルコゲン)を含んだアモルファス半導体が用いられています。アモルファスは結晶と異なり、原子配置に規則性がないため、通常の解析が難しい材料です。このカルコゲンを含んだアモルファス材料に対して、放射光を用いた実験や、第一原理計算といったシミュレーションを用いることで、原子レベルの結合や電子の状態を解析することに成功してきました。また、それらの知見を生かして、新しいアモルファス材料の発見に繋げています。